R05年度学習会 ~森林生態を構成する土壌の世界~ [森林観察学習部会]
2023.11.2 11.17
森林生態系を構成する土壌について理解を深めるため、「森を支える土壌の世界」有光一登著 林業改良普及双書発行をテキストにして学習しています。
11月の学習項目は以下の通りでした。
〇11月2日 場所 ゆいわーく茅野 101会議室
おわりに ………………………………………井村j
〇11月17日(金) 講演会
「森林の根系を介して見る世界;植物と土壌の関わり」
講師:牧田直樹氏 信州大学理学部 物質循環学科
場所:ゆいわーく茅野101、102会議室
12月の学習予定
〇12月7日 場所 ゆいわーく101会議室
はじめに…………………井村j
〇12月21日 場所 ゆいわーく101会議室
担当は12月7日に決めます。
毎月このコーナーでは、学習した内容から、興味深い話題を抜粋して掲載していきます。
森をささえる土壌の世界 第6章 土壌を保全するために (会員)井村淳一さんの資料より
おわりに -森林土壌で誤解されがちな6つのこと
1.土壌構造は土壌の層位の構成Ao、A,B,Cのことではない。
〇土壌学としての「構造」は、土壌粒子の集合状態、あるいはその集合体を意味するものとして使われます。(第8話)
〇土壌粒子の集まった集合体のことを専門用語では粒団とも言い、形や大きさ、硬さなどの違う粒団を種類分けして、それを土壌構造と呼んでいます。
2.よく発達した森林土壌はフワフワしたスポンジ状の団粒構造をもつか?
〇森林土壌は気候、生物、地形、地質(母材)の4つの生成因子に時間の因子が加わって、その相互作用でできた自然物である。(第6話)
〇それぞれの生成因子の働き方の違いによって、違った種類の土壌が発達し、その結果それぞれ違った種類の土壌構造を持つようになるのです。
よく発達したBb型土壌は粒状型構造、Bc型土壌は堅果状構造、Bd型土壌やBe型土壌は団粒状構造を持ち、それぞれ立派に発達した森林土壌です。
〇土壌が発達すると団粒構造という柔らかいスポンジ状構造ができるわけではありません。土壌の生成に伴って、様々な種類の土壌構造がみられ、細粒状構造、粒状構造、堅果状構造等は決してスポンジ状の柔らかい保水性に富んだ構造ではない
3.団粒構造と団粒状構造 どちらが柔らかいフワフワしたスポンジ状の構造か?
〇保水力の高いスポンジ状の柔らかい構造は団粒状構造が相当する。
〇団粒構造という用語は、色々な土壌構造の総称として使われる用語なので、柔らかいフワフワしたスポンジ状のものに限らない。
4.ブナ林の土壌は保水力が高いか?ブナ林は水源涵養機能が高いか?
〇ブナ林の土壌は団粒状構造を持ったBd型、Be型のような保水力の高いものばかりではない。
東北地方のブナ林にはBa、Bb,Bcなどの乾性、弱乾性の褐色森林土も PdやPwなどのポドゾルも分布する。こうした土壌は保水力、水源涵養機能が高いとは言えない。
〇ブナ林という生物生成因子の他に地形、地質、気候の因子も作用して水源涵養機能の高い土壌も低い土壌も生成される。
5.腐植と腐食
〇森林土壌の表層では、落葉落枝が土壌動物や土壌微生物の働きで分解されて、もとの植物遺体とは違った組成の、高分子の「腐植」と言われる有機物になります。これが母材から生成された粘土と結びついて腐植・粘土の複合体を作ったものが土壌粒子です。
〇腐植というと微生物の働きで腐朽する、腐るという印象が強いが、落葉落枝の分解・腐植にはダニやトビムシ、ヤスデ、ミミズ等といった土壌動物による摂食、破砕も大きな働きをしているので、腐食というより、分解と言った方が良い。
6.土壌孔隙は木の根の腐った跡や土壌動物の通った跡か?
〇土壌動物は土壌表層近くに生息しているものが殆どですし、木の根も深さ50cm以上になると少なくなります。それでも土壌粒子の間に孔隙ができ、保水や水の移動が行われる。
〇土壌表層の腐植の多いところでは、粘土や粘土腐植複合体それ自体が持っている粘着作用によって、互いに強く結合され粒団が形成される。これに生きている植物の細かい根が粒団を締め付け、吸水によって乾燥させる作用が加わって、水にあっても崩れない耐水性の粒団になる。
そしてその粒団相互の隙間が保水の役割をする孔隙になる。
〇腐植や生きた根の少ないB層では腐植の接着作用や根の締め付け作用よりも粘土自体の粘着作用によって、土壌粒子の集合体ができ、孔隙が生まれるものと思われる。孔隙は土壌粒子自体がくっつき合うことによってできるものの方が多い。
(更新日 : 2023年11月27日)