R06年度学習会 ~身近な自然を見直しましょう~ [森林観察学習部会]
2024.12.12 12.26
後半のテキストは、下記に決まりました。
<今年度後半の使用テキスト>
「植物の形には意味がある」園池公毅著 ベル出版発行
12月の学習項目は以下の通りでした。
〇12月12日 場所:ゆいわーく茅野 集会室1
第6章 根はなぜもじゃもじゃなのか………中野
第7章 花の色と形の多様性…………………野崎
〇12月26日
場所:ゆいわーく茅野101、102会議室
第8章 果実の形は何が決めるのか…………井村e
第9章 草の形・木の形を決める要因………井村j
第10章 生物と環境のかかわり
1月の学習予定
「植物の形には意味がある」は12月に終了しましたので、1月の学習会はありません。
2月の学習予定
〇2月8日(土)
【信州大学出前講座】~地質探偵とさぐる北アルプスの生い立ちの謎~ 講演会
毎月このコーナーでは、学習した内容から、興味深い話題を抜粋して掲載していきます。
植物の形には意味がある
第9章 草の形・木の形を決める要因 井村淳一さん(会員)の資料より抜粋
1.木の葉の向きと光を受ける効率
〇光が差し込む方向に直角に葉を向ける。
〇光の差し込む方向が刻々変わる場合
――追尾する仕組みとエネルギーが必要
〇葉の角度を固定したい――枝の伸びる方向が色々でも葉は上を向いてつく
但し、大きな木の葉は上を向きつつも木の外側を向いていることが多い。
(木の内側は、他の葉によって光が吸収され暗いから、明るい方向に向ける)
2.草の葉の向きと光合成の効率
〇草の葉も。基本的には地面と平行に葉を伸ばすものが多いが、イネ科の植物のように細長い葉を地面に垂直に近い角度で伸ばすものも多い。
〇葉の光合成の量は光の量にほぼ比例して増加するが、光の量がある程度以上多くなるとこの関係は成立しない。(光の量が多くなるにつれ光合成の量の割合は小さくなり 一定の値より多く光合成量を増やすことはできなくなる。つまり、光合成の効率は、弱い光のもとでは高いが、光が強くなるとどんどん落ちていく。)
〇光の方向に対し葉を斜めにすると、光の当たる量は弱くなるが、効率は高いので光合成の量はあまり変わらない。一方で投影面積は小さくなるので、その葉の下に別の葉をつけておけば、その葉にも光が届き光合成ができる。つまり葉を斜めに伸ばす方が光合成量を全体として多くできる。
〇これは1本の草の場合であって、その下に別の植物が地面に平行な葉をつけ、光を独占するとその植物の方が有利になり、進化の過程ではそのような裏切りものが生き残っていく。光合成的には斜めの葉をつける方が有利な状況にあっても、地面に平行な葉をつける植物によって主に占められてしまう。
〇斜めの葉をつける植物が優占する環境というのは、単に光が強いだけではなく、植物間の競争があまり激しくない場所に限られる。
コラム 自分と他者の区別
自分のものと競争するか、別の個体のものと競争するかが問題。(一つの個体を2つに分割して、物理的に分離した場合、その片割れ同士は別の個体とする) 植物はこれを区別できているらしい。
3.木の形を決めるもの
光等の環境が変われば木の形が変わることが予想されます。2本の木を隣接して植えると、それぞれお互いの方向に枝を伸ばしても、すぐに重なって光があたらなくなるので、ほんの小さな枝の時に枯れてしまい、2本の木の間には枝が残らなくなります。
明らかに人間が移植したわけではなさそうな場所で枝が交錯しているときは、陰樹と陽樹の組み合わせである場合が多い。(陰樹が先に枝を伸ばしている暗い空間に陽樹が新しく枝を伸ばすのは難しいでしょうが、陰樹ならば、陽樹が先に枝を伸ばしている空間であっても、その暗さに耐えて、そのまま枝をのばすことが可能です)
同じ種類の木の間に光の取り合いは、枝先の形にもみることができる。まばらに植えられた同じ種類の大木が枝を伸ばしてちょうど空を覆っているような場所で、上を眺めると、別々の木から伸び出た枝が、ちょうどお互いが重ならないように接しているのをみることができる。これは、お互いが枝を伸ばしてみた結果、どちらかが先に光の空間を獲得できたか否かで、一方は枝を伸ばし、一方は枯れて枝を落とすことの繰り返しの結果である。
コラム 木の形のシミュレーション
仮定:枝が二又、二又に分かれて細くなっていく木
パラメータ:分岐の角度、枝の出る方向、分岐の頻度
問題:何が有利になるか?という問題設定で以下の4つの項目を評価してみる。
①光の獲得性?――上部に枝を水平に展開するような樹形
②物理的安定性?――下にいくほど幹や枝が多くなる形
③繁殖の効率?――種子等をたかいところから散布するのが有利なので、ずっと上部に伸びてチョコチョコ枝分かれする形
④表面積の最小化?――小さく貧弱な樹形
上記4つの評価項目を同時に評価しようとすると樹木の多様性が広まる(図9.7)。
但し、④を除いても同様の多様性がうまれたことから、④は樹木の形を規定するようなファクターではないらしい。
この結果から、
〇現実の木の形は、光の獲得、物理的安定性、繁殖の効率の3つの要因で説明が付くこと
〇複数の要求を満たそうとすることによって多様性が生まれる。
図、画像の出典は教本より
(更新日 : 2024年12月29日)