森林文化学習会 11月

R06年度学習会 ~身近な自然を見直しましょう~   [森林観察学習部会]

2024.11.14 11.28

後半のテキストは、下記に決まりました。
<今年度後半の使用テキスト>
「植物の形には意味がある」園池公毅著 ベル出版発行

11月の学習項目は以下の通りでした。
〇11月14日 場所:中央公民館いきがいサロン
第2章 葉の断面の形を考えてみよう………吉江
第3章 葉の厚みの多様性を考える…………井村e

〇11月28日 場所:ゆいわーく茅野301会議室
第4章 葉の大きさと形の意味………………吉田
第5章 茎はなぜ長細いのか…………………渡邊

12月の学習予定
〇12月12日 場所:ゆいわーく茅野 集会室1
第6章 根はなぜもじゃもじゃなのか………中野
第7章 花の色と形の多様性…………………野崎
〇12月26日
場所:ゆいわーく茅野101、102会議室
第8章 果実の形は何が決めるのか…………井村e
第9章 草の形・木の形を決める要因………井村j
第10章 生物と環境のかかわり

毎月このコーナーでは、学習した内容から、興味深い話題を抜粋して掲載していきます。

植物の形には意味がある
第3章 葉の厚みの多様性を考える  井村悦子(会員)の資料より抜粋

1 極端な環境の葉を考えて見よう
植物にとって最も極端な環境は暗闇<モヤシの例>
(1)葉が緑色にならない➔暗い所では光合成ができないからクロロフィルを合成しても無駄だから、作らない。
(2)葉が開かない➔葉を開いても光合成ができないので、開かない。
(3)ひょろひょろと細長い➔明るくなる兆しがないので、土の中にいると考え、親からもらった栄養があるうちに地上に頭を出そうとしている。土の中は風に吹かれて倒れる心配もない。
(4)茎の先端が上ではなく、下をむいている。
➔土を押し上げて成長するときに生長する部分を傷つけないため。
植物にとって「暗闇」=「土の中」 という認識。 

2  光の明るさと葉の厚み
水陸両用の植物の葉を空気中と水中で比較して、葉の厚みの多様性の原因を考えてみる。
キクモ (アクアリウムで観賞用に利用される水草)

水草の異形葉は水中葉では薄く、気中葉は厚いのが一般的
<空気中と水中では何が違うのか>
まずは、光の強さに絞って考える。
1本の木の
〇明るい環境の葉(てっぺんの葉)は
➔直射日光が良く当たる
➔厚い(柵状組織※1が2層にも3層にも)
〇内側についた葉は
➔弱い光しか当たらない。➔葉は薄い。
光は柵状組織を通る間に葉緑体に徐々に吸収される。弱い光では、柵状組織を2層、3層があっても役に立たないので1層だけにしておいた方が得。
弱い光の下では、柵状組織を減らした方がいい。
光が強ければ柵状組織を増やした方が得。
ただし、水草の葉の厚さは陸の物とはけた違い。単に柵状組織1層だけという程度ではなく。葉の細胞の層が2~3層が当たりまえ。これは光環境以外に葉の厚みを変える要因があるのかもしれない。
※1:柵状組織

3 二酸化炭素の拡散※2と葉の厚み
(※2:拡散とは、物質が広がり散ることや、濃度の濃い方から薄い方へ分子が移動すること)
光合成に効く光以外の要因としてば、二酸化炭素が考えられる。
〇空気中の葉 気孔から入った二酸化炭素は細胞の隙間を通って各細胞に届けられる。
〇水中の葉 気孔が見られないのが普通(気孔を持っていても、周りが水なので意味がない)
細胞の隙間も空気で満たされてはいない。水の詰まった細胞の中をゆっくり拡散していくしかない。
しかも、水中では、葉からの水分の蒸発を防ぐクチクラ層の必要がない。
水草は、クチクラ層を持たず、葉の全表面から二酸化炭素を取り込める。
内部の細胞は表面の細胞の水の中をゆっくりと拡散してくる二酸化炭素が頼り。効率を良くするには水面と接しない細胞が少ない方が良い。 ➔ 薄い
葉の厚さは、光より、二酸化炭素の拡散の問題の方が効いていると思われる。

4 蒸散と葉の厚み
植物の生長するスピードは、葉が薄い方が大きい傾向があるが、わざわざ葉を厚くする理由は何か?
<ツユクサの実験>
葉の表皮を剥いで光合成をする細胞をむき出しにする。
むき出しにすることによって、外界との境界面積が増えれば蒸散は増える。
むき出しにすることにより二酸化炭素を取り入れる面積が増えるが、光合成は変わらない。
(つまり、二酸化炭素の取入れ量には関係しない)
水が足りているところでは、薄くして高い成長速度を実現し、乾燥しやすいところでは厚くして蒸散を防ぐという戦略も考えられる。 ➔ 水の量が葉の厚みを左右する。
図、画像の出典は教本より

(更新日 : 2024年11月30日)