森林文化学習会 7月

R05年度学習会 ~森林生態を構成する土壌の世界~   [森林観察学習部会]

2023.7.13 7.27
森林生態系を構成する土壌について理解を深めるため、「森を支える土壌の世界」有光一登著 林業改良普及双書発行をテキストにして学習しています。

7月の学習項目は以下の通りでした。
〇7月13日
第3章 土壌の成り立ちと性質
7話 地形も地質母材も土壌をつくる……………吉田n
8話 土壌構造で土壌の種類を判定する…………吉江

〇7月27日
9話 いろいろな土壌構造の成り立ちを見る……矢崎
10話 土性と堆積状態で土壌を分ける…………黒田

8月の学習予定
〇8月10日 場所 ゆいわーく茅野 集会室1
11話 粘土鉱物と腐植による養分の吸着保持………………南波
12話 陽イオン交換が植物にきわめて重要な理由…………井村e

〇8月24日 場所 ゆいわーく茅野 集会室1
13話 土壌の調べ方と手順……………………………………本村
14話 土壌を区分し、層の厚さ・土色を調べる……………池田

毎月このコーナーでは、学習した内容から、興味深い話題を抜粋して掲載していきます。

森をささえる土壌の世界 第3章 土壌の成り立ちと性質     (会員)吉田直美

7話 地形も地質母材も土壌をつくる

◇地形も土壌生成因子の1つ
〇我が国の森林の多くは山地、丘陵地の傾斜地に成立しているので、尾根筋、中腹、沢筋など斜面の位置によって 出現する土壌に違いがある。
〇これは降水としてもたらされた水が地形の傾斜に従って斜面の上部から下部へ土壌中の粗孔隙、中孔隙の中を移動していくから。斜面上方から水の供給が多い斜面下部ほど湿った状態になる。
〇地形によって水の移動が左右され、水の流れ去るところ、集まりやすい所の違いが生じ、同じ降水量があるとみられる比較的狭い範囲であっても土壌の乾湿の違いができてくる。
〇火山の多い日本列島で母材としての役割が重要な火山灰。安定した緩斜面や平坦面では厚く堆積するが、傾斜の きつい斜面では水や重力の力で斜面の下方、平野部に運ばれる。
山地:
中生代以前の堆積岩や安山岩、花崗岩が母材。高地にあるため風化が進み、カルシウムやマグネシウムなどの塩類が容脱して、残った鉄が土の色を与える
台地:
火山灰が母材。草本植生が長期間維持されて、多量の有機物が供給され、この有機物と、火山灰に含まれる火山ガラスから溶出したアルミニウムと結合して、微生物による分解を受けにくい形になり、黒みの強い腐植が多量に集積する、黒くて柔らかい土
低地:
河川や海の営力によって運搬された泥岩や砂岩が主体の堆積岩。水の影響を受けて土層が酸化・還元状態になり、鉄化合物の色となって土色に反映される。
グライ土は水の影響を最も強く受けており、土層が強還元状態になると青緑色を呈する。
〇日本の森林の4割がスギ、ヒノキ、カラマツ、エゾマツ、トドマツなどの人工林になり、気候に対応した天然分布をみることは難しいが、人工林となっても土壌は変わらない。
人工林の下にも、その場所の気候帯に対応した天然林と同じ土壌が分布している。
森林土壌が森林樹木の働きだけで生成されているのではないのが分かる。
地形の違い→土壌に影響

出典:トコトンやさしい土壌の本 日刊工業新聞社発行
出典:トコトンやさしい土壌の本 日刊工業新聞社発行

◇岩石や火山灰などの地質母材は土壌の骨格
〇土壌の骨格は表層の地質を構成する岩石や火山灰、河川が運んだ砂礫や堆積物が風化して、物理化学的に変化してできた粘土である。
〇この粘土と落葉落枝などが分解していく途中段階の腐植と言われる有機物が結びついて土壌粒子ができている。
〇岩石の種類や火山灰の組成、河川が運んだ堆積物の組成によって風化、粘土生成の過程が違い、それぞれの場所固有の降水量や気温など気候因子の作用も加わって、違った種類の粘土が生成され、それに植生の影響も加わって、いろんな種類の土壌ができている。
〇日本列島の土壌は傾斜のきつい山地が多く、絶えず斜面を土壌やその母材となる岩石とその風化物が重力や水の力で移動するため、熟成することなく比較的若い状態に保たれている。これは母材である基岩や火山灰の性質の影響が残って土壌の性質に反映されることを意味する
母材の違い→土壌に影響

◇土壌生成因子は相互に関連し総合的にはたらく
〇地形と地質は密接な関係がある。
〇地形の特徴が母材の風化の仕方、水の移動などに影響し、土壌生成の道筋に違いをもたらす。
〇土壌生成因子はそれぞれ別々に作用しているのではなく、相互に関連して総合的にはたらいている。
さまざまな因子が総合的に→土壌に影響

◇全く人手が加わらない森林はほとんど無い
〇現在森林で覆われているところでも、外観からみた現在の森林状態からは想像もできない利用の痕跡がみられることがある。
〇古代から人間の開発の手が繰り返し加わって、自然物としていったん生成発達した土壌が人の手によって劣化したとみられる地域もある。
〇元のような発達した土壌が生成されるまでには、数百年以上の長い年月がかかるだろう。
人の手→土壌に影響

(更新日 : 2023年07月29日)