R05年度学習会 ~森林生態を構成する土壌の世界~ [森林観察学習部会]
2023.6.8 6.22
22年度は前半で生物多様性についての基本的は事項について理解を深め、後半はその土台となる「土壌」と生物との関係を学びました。
23年度は焦点を少し絞り、森林生態系を構成する土壌について、理解を深めることにします。
使用テキストとして「森を支える土壌の世界」有光一登著 林業改良普及双書発行を使います。
後半は森林の生態に関連した事項を取り上げ森林への理解を深めます。(テキスト等内容詳細はメンバーと相談して決める予定)
尚、講演会は2回開催所定です。
6月の学習項目は以下の通りでした。
〇6月8日
第1章 土壌と水の関わり
3話 水の浸み込みやすさを左右するA0層………井村j
4話 A0層の性状でも水の浸透能が異なる………南波
〇6月22日
第2章 土壌と森林の関わり
5話 土壌は森林生態系の大事なメンバー………池田
6話 森林土壌はまさに自然の産物………………井村e
7月の学習予定
〇7月13日
第3章 土壌の成り立ちと性質
7話 地形の地質母材も土壌をつくる……………吉田n
8話 土壌構造で土壌の種類を判定する…………吉江
〇7月27日
9話 いろいろな土壌構造の成り立ちを見る……矢崎
10話 土性と堆積状態で土壌を分ける…………黒田
毎月このコーナーでは、学習した内容から、興味深い話題を抜粋して掲載していきます。
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森をささえる土壌の世界 第2章 土壌と森林の関わり (会員)井村悦子
6話 森林土壌は、まさに自然の産物
◎気候、生物、地形、地質で変わる森林土壌
森林土壌とは人間の手がほとんど加わっていない自然物で、森林をとりまく自然条件の働きで今日の姿になった。
土壌生成:土壌が自然にできること
土壌生成因子:土壌に作用する自然条件
「気候」の因子は主に降水量と気温。気候の因子は、「生物」の因子の主役である植生の分布にも関係がある。
◎降水量の多い日本では気温の因子が大きい
日本列島は降水量が多い。高山の森林限界以上の高海抜地を除けば、どこでも森林が成立し、その森林の下には森林土壌が分布する。
〇降水量
降水量の地域差で生成される土壌の種類に差は出ない。
〇気温
日本は南北に長く緯度の差、海抜0mから3000mの高度差が平均気温の違い⇒これを反映して気候の違い⇒植生の違い⇒生成される土壌の違いがみられる。
〇日本の森林の4割がスギ、ヒノキ、カラマツ、エゾマツ、トドマツなどの人工林になり、気候に対応した天然分布をみることは難しいが、人工林となっても土壌は変わらない。
人工林の下にも、その場所の気候帯に対応した天然林と同じ土壌が分布している。
森林土壌が森林樹木の働きだけで生成されているのではないのが分かる。
森林が成立するに十分な降水量がある日本においては、大まかにみて年平均気温の高低による気候帯の違いに対応し、そこに天然に成立する森林の種類が違い、気候と植生が違えば違った土壌が分布していることが分かる。
◎生物因子は気候・地形因子と深い関係
「生物」因子としては、森林生態系の分解者である土壌動物や微生物も土壌生成に深くかかわっている。
〇分解者の働きは、気候因子と深い関係がある。
〇分解者と地形との関係
地形の違い⇒乾湿の違い⇒堆積有機物の分解とAo層の体積に差異が生じる。
斜面上部、尾根筋⇒乾燥⇒分解者の活動が活発でなく有機物の分解が進まない⇒モル型のAo層厚い
斜面下部、沢筋の湿った所 ⇒有機物の分解が進行⇒ムル型のAo層
〇土壌動物 (体幅のサイズにより分類)
小型(約0.1㎜以下):線虫類、原生動物
中型(約0.1~2㎜):ダニ、トビムシ、
ヒメミミズ、シロアリ
大型(約2㎜以上):ムカデ、ヤスデ、大型ミミズ、クモ
〇土壌微生物 (細菌、放線菌、糸状菌)
細菌、放線菌は土中のあらゆるところに生息し、多様な生化学活性と、高い繁殖力をもち、生態系の物質循環に重要な位置を占める。
糸状菌は、落葉落枝や枯死痕根などの有機物遺体の内部に侵入し、分解酵素を分泌して菌体に利用できる分解産物を吸収摂取。
これらの分解者はAo層から鉱物土層の表層にかけて最も多く生息する。
その、生息密度、活性は気象条件や土壌の乾湿の条件に左右され、それぞれの環境条件に応じて、土壌生成に深くかかわっている。
(更新日 : 2023年06月26日)
