R05年度学習会 ~森林生態を構成する土壌の世界~ [森林観察学習部会]
2023.5.11.5.25
22年度は前半で生物多様性についての基本的は事項について理解を深め、後半はその土台となる「土壌」と生物との関係を学びました。
23年度は焦点を少し絞り、森林生態系を構成する土壌について、理解を深めることにします。
使用テキストとして「森を支える土壌の世界」有光一登著 林業改良普及双書発行を使います。
後半は森林の生態に関連した事項を取り上げ森林への理解を深めます。(テキスト等内容詳細はメンバーと相談して決める予定)
尚、講演会は2回開催所定です。
5月の学習項目は以下の通りでした。
〇5月11日
森を支える土壌の世界
始めに ………………………井村j
〇5月25日
第1章 土壌と水の関わり
1話 樹木は「緑」のダムか?………………矢崎
2話 森林で土壌はスポンジ状に?…………黒田
6月の学習予定
〇6月8日
第1章 土壌と水の関わり
3話 水の浸み込みやすさを左右するA0層
………………井村j
4話 A0層の性状でも水の浸透能が異なる…南波
〇6月22日
第2章 土壌と森林の関わり
5話 土壌は森林生態系の大事なメンバー……池田
6話 森林土壌はまさに自然の産物 ……………井村e
毎月このコーナーでは、学習した内容から、興味深い話題を抜粋して掲載していきます。
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森をささえる土壌の世界 はじめに (会員)井村淳一
森林の定義
ある場所に生育している植物の集団を植生 或は植物群落などと呼ぶ。植生のうち高木が優占するものを森林という。しかし森林とそれ以外の植生との境界はあいまいである。
国連食糧農業機関は森林を次のように定義している。
高さ5m以上かつ樹冠被度10%以上の樹木、もしくはその土地においてこれらの基準に達しうる樹木が存在する面積0.5ha以上の土地、ただし、果樹園や農林複合経営用地は含まない。
森林の多面的機能
1.生物多様性保全:
遺伝子保全、生物種保全(植物、動物、菌類)、生態系保全(河川生態系、沿岸生態系等)
2.地球環境保全:
地球温暖化の緩和(二酸化炭素吸収、化石燃料代替エネルギー)地球気候システムノ安定化
3.土砂災害防止機能/土壌保全機能:
表面浸食防止、表層崩壊防止、土砂災害防止、土砂流出防止、土壌保全(森林の生産力維持)、自然災害防止
4.水源涵養機能:
洪水緩和、水資源貯留、水量調節、水質浄化
5.保健・レクレーション機能:
療養、保養、レクレーション
6.快適環境形成機能:
気候緩和、大気浄化、快適環境形成、
7.文化機能:
景観、学習・教育、芸術、宗教・祭礼、伝統文化、地域多様性維持
8.物質生産:
木材、食料、肥料、飼料、薬品、緑化材料、工芸材料、観賞用植物
土壌生成因子
ある場所に存在する生物とそれをとりまく環境(土壌・大気など)を合わせて生態系という。
一般に陸上生態系の有様を決定する状態決定因子としては以下の5つが重要である。
気候、生物、地形、地質(母材)、時間
森林は高木が優占する陸上生態系としても定義できるので、やはりこの5因子によって状態が決定される。さらに陸上生態系の中の土壌に限定すると、この5因子は土壌生成因子と呼ばれる。
気候因子:重要なのは気温と降水量
生物因子:生物相のうち植物相にもとづき分類された地域区分のことを植物区分と呼ぶ。
地球規模の大きな空間スケールでは気候と生物相が植生の状態を決めている
地形因子:尾根・谷のような地表面の起伏する環境の不均一性を意味し、土壌の物理・化学的性質に影響を与える。
地質因子:土壌の原材料となる母材(基岩)の性質を意味し、土壌は母材の化学組成・物理性を反映して形成され、植物に影響を与える。
時間因子:遷移に対応する。攪乱によって破壊された植生は時間経過とともに極相状態へ変化していく、さらに数百万年に及ぶスケールでは、土壌への攪乱がない場合は、栄養塩が溶脱したり、粘土に吸着されて土壌が貧栄養化し、極相状態も変化する
土壌の母材
土のもとになるのは岩石です。岩石は気温の変化や水の働き等で、次第に削られて細かくなります。
これを風化(風化作用)と言います。
〇岩石の風化
物理的風化:岩石に含まれる鉱物は気温の変化により、膨張/収縮を繰り返しながら、割れ目が入り、割れ目に水が入って凍結したり、植物の根が入り込んで割れ目が広がり砕けていきます。礫、砂、泥(シルト)になります。
化学的風化:岩石中の鉱物には、アルミニュウム、ケイ素、カルシウム、カリウム、リン等の元素がふくまれています。細かくなった鉱物が酸性の雨水と反応すると、それらの成分が溶けだします。そして、一部は安定した物質に再合成されて粘土になります。
(更新日 : 2023年05月31日)
