森林文化学習会 2月

大地の五億年

R04年度学習会 ~生物多様性への理解~   [森林観察学習部会]

2023.02.25

2月は「土の今昔と人との係わり」講演会
2月25日 令和4年度学習会の纏めとして、長野県環境保全研究所の須賀 丈研究員と葉田野 希研究員に題記の内容で講演をしていただきました。
場所はゆいわーく茅野 301,302会議室で 14:00~16:10 20名が聴講しました。
今年度も学習会は「生物多様性」をテーマに、年度前半は鷲谷 いずみさん著作の「絵でわかる生物多様性」をテキストに生物多様性の全体の概要を理解し、後半は生物多様性を育む基盤となる「土壌」に焦点をあて、藤井 一至さん著作の「大地の5億年」をテキストに学びました。今回の講演会はこの学習会で学んだことの整理と理解を深めることを目的としました。
その目的を須賀さんにお伝えしたところ、「古土壌」の研究をされている葉田野さんに「土の成り立ちとその今昔」を、須賀さんは「黒ぼく土と草原の1万年」として霧ヶ峰等この地方の表土を特徴づけている「黒い土と生物の係わり」についてお話をしていただくことになりました。
葉田野さんのお話では、土壌はその元となる岩石が地表環境(気候、地形等)の変化とそれに伴う様々な生物活動の結果でできたもので、古い時代の土壌を調べることで、地球全体の大陸移動の経緯や世界的気候変動の経緯が炙り出され、今の時代に繋がることが話され、何か壮大な気持ちになりました。たかが「土」と言うなかれ! という思いでした。
また、須賀さんのお話では、日本の表土は、主に「褐色森林土」と「黒ぼく土」がそれぞれ国土の
30%を占めていて、特に「黒ぼく土」は草原が長い間維持されたことにより形成された。その母材の大部分は火山灰でそれに草原の植物の腐食物が絡まって形成されているのだが、その大部分の黒い土に人間の火入れ活動(野焼き等)が関与した微粒炭を含んでいることがわかってきた。よって「黒ぼく土」は主に縄文時代以降の狩猟・採集や放牧等、人の営みで草原が形成維持されてきたことを物語っている。最終氷期以降、大陸から分離された「蝶」や「草原植物」が縄文時代以降 数や種数を増加させてきた。しかし近代のグローバルな人の営みで、草原の維持が困難な時代になってきて、草原で維持されてきた生物の多様性や数が減少している。2022年の生物多様性条約COP15で国土の30%を自然環境エリアとして保全することが合意されたとのこと。どのようにして、その目標を達成していくかを問われている。
以上、お二人の講師に大変分かり易くお話いただき、令和4年度の学習会で漠然と学んできた事柄が、整理でき有意義な講演会になったと思います。(井村淳一記)

纏めの講演会

(更新日 : 2023年02月26日)