R04年度学習会 ~生物多様性への理解~ [森林観察学習部会]
2022.5.12 5.26
「生物多様性への理解」をテーマに、今年度前半は、鷲谷いずみ著「絵でわかる生物多様性」を学習します。
5月の学習項目は以下の通りでした。
〇5月12日
第1章 生物多様性ってなに?
1.1 生物多様性とは ……………………………井村j
〇5月26日
1.5 バイオームと人為的改変 …………………本村
1.7 生態系サービス ……………………………南波
6月の学習予定
〇6月2日
第2章 生物多様性の形成と維持
2.1 生命の歴史と生物多様性 …………………中野
2.2 多様化は生物の遺伝・進化の必然 ………矢崎
〇6月16日
2.4 種分化とエコタイプ ………………………井村e
第3章 生物多様性の危機と人間の活動
3.1 生命史第六番目の大量絶滅 ………………池田
毎月このコーナーでは、学習した内容から、興味深い話題を抜粋して掲載していきます。
第1章 生物多様性ってなに? 本村光子(会員)
1.5 バイオームと人為的改変
生物群集の構成要素のうち、植物の集合を植物群集(植物群落)、植生とよぶ。
植生は相観(見た目)の相違によりタイプ分けできる。
植生の相違は、気候、地質、地形、土壌、動物との生物相互作用の影響で空間・時間的に変化する。
植生の相違は、動植物にとって生息・生育場所の違いを意味し、生息・生育できる動植物を決定する。
今日、人間の土地利用が、植生のタイプ、量、分布に大きな影響を与えている。
植物のバイオマス生産と種の分布は、気候の主要因子、気温と降水量による影響が大きい。
気候帯に対応させた生態系(植生)区分をバイオームBiomeという。
バイオームは植生の相観でタイプ分けされ、優先する植物のタイプに応じて主に草原あるいは森林としての名称が与えられている。
それぞれのバイオームは人為的な影響の歴史も本来の脆弱性も異なる。
古代からの森林伐採や農地開発などの歴史に応じて地域ごとに本来のバイオームの面積も異なる。
地中海地方のバイオームがもっとも大きく改変されているギリシャ哲学者のプラトンの記述「今ではハチの餌しかない山」 ←森の消滅
地中海性気候のバイオームは人間活動に対してもともと脆弱。
1.6 生物多様性を保全すべき理由
現生人類(ヒト)の出現
→ 人間活動の影響から完全に免れている原生的自然は殆ど残存せず
→ 多くの種を絶滅に導いた
人間活動が自然の作用と調和して維持されている生態系と生物多様性は、人類に多くの恩恵をもたらしてきた。
生物多様性保存すべき理由:
〇有用性を意味する使用価値
〇地球の生命の歴史のかけがえのなさ
→ 生物多様性という言葉に秘められた生命システムの存在自体が尊重されるべきこと
〇存在価値を守ることは、将来世代にとって重要性の高い使用価値の保存のため重要な意義をもつ
〇使用価値の認識するためのキーワードの必つが生態系サービス
〇生物から学ぶことはヒトの様々な課題を解決するアイデアの源泉(生物模倣技術)→ 直接利益を生む
例:
〇カワセミ → 新幹線500系の騒音問題を解決
カワセミの鋭い嘴が水の抵抗を少なくし、水面に飛び込む時にしぶきが少ないのが特徴
〇ジンベイザメ → 水上ゴミ回収ドローン Water Shark
ジンベイザメは平く大きい口を開けたまま、あまり動かずに大量のプランクトンや甲殻類にありつく動きを模倣。
〇フクロウ → パンタグラフ、ノートパソコン内蔵ファン
フクロウの羽の形状を模倣し、騒音を低減
〇蓮の葉 → ヨーグルト容器の蓋
蓮の葉が水玉をはじく構造を模倣してヨーグルトが付着しない蓋
〇ヤモリ → 接着テープ
ヤモリの垂直の壁を歩ける脚の構造を模倣し、何度も繰返し利用できる接着テープ
(更新日 : 2022年05月31日)