R03年度学習会 ~生物多様性への理解~ [森林観察学習部会]
2021.11.4 11.18
11月の学習項目は以下の通りでした。
〇11月4日
第5章 生物のシンギュラリティ……………石田
第6章 生物か無生物か………………………南波
〇11月18日
第7章 さまざまな生物………………………吉田n
第8章 動く植物………………………………黒田
12月の学習予定
〇12月2日
第9章 植物は光を求めて高くなる…………矢崎
第10章 動物には前と後ろがある…………本村
〇12月16日
第11章 大きな欠陥がある人類の歩き方…定成
第12章 人類は平和な生き物………………池田
11月からゆいわーく茅野で実施しています。
毎月このコーナーでは、学習した内容から、興味深い話題を抜粋して掲載していきます。
第8章 動く植物 黒田キミさん(会員)の資料より抜粋
一番身近な生物である植物についてみていこう。
虫を捕まえるハエジゴク
植物というと、動かない、というイメージが強い。
しかし、実は動く植物は結構たくさんいる。その中でもっとも有名な物の一つがハエジゴク(ハエトリソウともいう)だろう。
葉には長い葉柄があり、先端に捕虫器になった葉を着ける。捕虫器は二枚貝のような形で、周辺にはトゲが並んでいる。葉の内側に、3本づつ感覚毛がある。
植物の神経? ハエによってハエジゴクの感覚毛が2回触れられると、裂片の表面の細胞が急速に拡大して裂片が閉じる。この時、感覚毛か表面の細胞に伝わるのは電気による信号である。そのため植物にも神経があるのでは、と言われたこともあった。動物の神経も電気によって信号を伝えるからだ。しかし、動物の細胞が情報を伝える時に、電気を使うのは神経細胞だけではない。例えば、ギャップ結合によって上皮細胞同士が情報をやり取りしているが、この時に使われているのが電気による信号である。
電気による信号を使う細胞はたくさんあり、神経細胞はその中の一つに過ぎない。神経細胞は、電気信号を非常に早く運ぶ、もっとも特殊化した細胞である。
したがって、植物が電気信号を使っているからと言って、神経があることにはならない。
植物はどれくらい長生きするか
〇日本で一番長寿な木
屋久島の縄文杉:樹齢2170年
, 大王杉:樹齢3000年以上
〇米国のブリスルコーンパイン
プロメテウス:樹齢4844年
メトシュラ: 樹齢4845年以上
スギの中でも縄文杉や大王杉のように長く生きるスギはめったにいない。苗の段階で死んでしまうものも多い。このことから、スギの平均寿命はかなり短い。
そう考えれば、スギより私たち人間の方が長生きなのである。
植物の年齢の測定法
1)放射性炭素による年代測定
炭素同位体の放射性炭素14による測定法。
あくまで、仮定が正しければという前提があり、ひとつの目安として考えた方がよい。
2)年輪年代学による推定
同じ地域・時代に成長した木々であれば、刻まれた年輪パターンも類似したものとなるため、異なる樹木間でも年輪パターンを一対一で対応させることができる。年輪幅や密度など木々に共通の(平均的な)年輪パターンの変化をグラフにしたものを標準年輪曲線といい、様々な時代の樹木試料について共通する部分を手がかりに年輪曲線をつなぎ合わせていくことによって標準年輪曲線を作成し、現代から過去に遡って年輪の変化パターンを得ることができる。
ブリスルコーンパインの年齢は年輪年代学による。
生きているときから樹木の大部分は死んでいる
幹が太くなるほどに、中心部にある導管や仮道管では、水を通す穴がふさがる。更に中心部全体にタンニンなどの物質をしみこませて、虫や菌の繁殖を防ぐ。
この中心部の死んだ部分を心材、周囲の生きている部分を辺材という。幹が太くなるにつれ、辺材はどんどん外側に移動していき、心材はますます太くなる。
樹木は長生きと言っても、生きている部分は幹の外側に移動しているわけで、同じ部分が生き続けているわけではないということである。樹木の寿命、ということを考え始めると、どこまでが、一つの生命と考えることができるのか。考えても無駄なことかもしれない。
ただ生物の多様性、それは素晴らしいことだということはできる。
図:教本「美しい生物学講義」より
(更新日 : 2021年11月29日)