森林文化学習会 7月

R03年度学習会 ~生物多様性への理解~   [森林観察学習部会]

2021.7.1 7.15

7月の学習項目は以下の通りでした。
〇7月1日
第4章 紫外線の庭
(前半)…………………………中野
(後半)…………………………井村j
〇7月15日
第5章 「目的」の創造
(前半)…………………………本村
(後半)…………………………吉江8月の学習予定

8月の学習予定

〇8月5日
第6章 真実を大事にする 吉成真由美インタビュー
(前段)…………………………石田
(中段)…………………………定成
〇8月19日
第6章 真実を大事にする 吉成真由美インタビュー
(後段)…………………………井村j
毎月このコーナーでは、学習した内容から、興味深い話題を抜粋して掲載していきます。

第4章 紫外線の庭(後半)        井村淳一(会員)さんの資料より抜粋

社会性昆虫コロニーも、全体が一つになって自己複製する
社会性昆虫とは
ハチやシロアリのように、集団を作り、その中に女王や働き蟻(蜂)のような階層があるような生活をしているなど、人間のそれに似た社会的構造を備える昆虫を指す。

社会性昆虫の群れの運営
ハチとアリの社会は、雌のみで運営されている。
〇受精卵からは雌、未受精卵からは雄が生まれる。
〇女王は雄と交尾ののち、単独で巣を作る。
〇雄バチは女王と交尾した後に死に、巣つくりには関係しない。
〇生まれた卵からかえった幼虫を育てながら産卵を繰り返す。
〇幼虫は成長して羽化すると働きバチとなり、女王を助け、子守、餌運び、巣作りをし、自らは繁殖しない。
〇秋になると女王と雄が生まれ、それらは巣から飛び出し交尾をして女王は越冬するが、それ以外のものは死滅する。

社会性の進化
ダーウインは社会性昆虫の扱いに困っていた・・・。
働きバチは子を産まず、子を産まなければその形質が子孫に伝わらないからである。

ハミルトンの血縁選択説により自然選択説で説明できるようになった。
自然選択において、選択されるのが個体ではなく、個体の持つ表現形であるという発想から始まる。
ある個体が生き延びたのは、ある性質を持っていたからで、その性質の元になる遺伝子が選ばれたのだと考えるのである。

ヒトの例で説明する。親と子がある場合、親の側から見ると、自分の子には自分の遺伝子の半分が入っている。一方兄弟姉妹の関係を考えると一方の遺伝子が他方に存在する確率も1/2であって、自分の子供の世話をする遺伝子も自分の兄弟姉妹の世話をする遺伝子も同様に成功する可能性があることがわかる。

アリやミツバチ(膜翅目)のように受精卵がメスになり、未受精卵がオスになるような昆虫では、同じ両親から生まれた姉妹間で一方の遺伝子が他方に存在する確率は3/4となり、自分の娘の世話をする遺伝子よりも自分の妹の世話をする遺伝子の方がコピーを後の世代に残しやすくなる。

このように考えれば、膜翅目であれ通常の性決定システムを持つ動物であれ、血縁関係の深い集団では、自分は子を持たず親を助けて兄弟を増やすやり方も、自分の遺伝子を残す目的に合致すると言える。もしも、自分の子供を作らずに、親を助けて子育てをする行動を取らせる遺伝子があれば、その行動によって、自分の子供を作る以上に遺伝子を残せる可能性があり、もしそれに成功すれば、その遺伝子は自然選択によって勝ち残るわけである。

このようにして、社会性昆虫における働きバチのようなあり方が、自然選択説で説明できることになった。
そして、このことは、社会性昆虫の特徴が、不妊の階層の存在にある、という考えをもたらすことになった。

生物は、DNA言語で書かれた自己複製プログラムを広めるために存在する。
花は花をつくるための仕様書を広めるために存在する。
ハチはハチを作るための仕様書を広めるために存在する。ゾウはもっとゾウをつくるため、鳥はもっと鳥をつくるために存在する。

(更新日 : 2021年08月02日)