森林文化学習会 11月

R02年度学習会 ~森林を良く知ろう~    [森林観察学習部会]

2020.11.05.11.19

11月の学習項目は以下の通りでした。
〇11月5日
4章 何を食べるかが「生命文明」の分かれ道…………………………………………定成
5章 間近に迫る現代文明の危機(前半)………………………………………………中野
〇11月19日
5章 間近に迫る現代文明の危機(後半)………………………………………………井村j
6章 「生命の法」と「慈愛の心」が地球と人類を救う(前半)……………………吉江

12月の学習予定
〇12月3日 場所:ゆいわーく茅野 集会室3
6章 自然に学ぶ「バイオミミクリー」
地球をおおう「生命文明連合」の構築……………………………………………………石田
〇12月17日 場所:ゆいわーく茅野 集会室3
次のテキストは以下とし2月18日まで実施します。
担当は、12月3日に決定します。
「面白くて眠れなくなる植物学」   稲垣栄洋著 PHP研究所

第4章 何を食べるかが「生命文明」の別れ道  定成寛司(会員)さんの資料から

「命への畏敬」を培う食事、培わない食事
〇森と共存するアジア太平洋の「美と慈悲の文明
コメを食べ、タンパク資源として魚を食べる生活長江文明、縄文人、マオリの人々、マヤ・インカ文明の人々 ⇒「自然循環型文明

〇森を破壊するアングロサクソンの「力と闘争の文明」   パンを食べ、肉を食べて、ミルクを飲む生活メソポタミア文明、ギリシャ文明、エジプト文明、インダス文明、黄河文明 ⇒「自然収奪型文明
【結語】世界がその文明のパラダイムシフトを成し遂げなければ、人類に未来はない。
鍵を握るのが日本人
〔例示〕自然災害への対応
―インドネシア、スマトラ島沖地震(大津波) 2004.12.
略奪はほとんど起こらなかった。→静かに悲しみをこらえていた。
阪神・淡路大震災、新潟中越地震時も同様
―アメリカ、ハリケーン「カトリーナ」2005.08
略奪が横行→自らの権利を主張

アジアという風土が長い年月の間に培った良識、すなわちアジアの人間は「悲しみを抱きしめて生きる」ことができる。これは人間以外の命に対して畏敬の念を持っているからであり「何を食べるか」によるところが大きい。
ところが、文明概念に大きな偏見が生まれた。コメと魚の食生活よりも肉とパンの生活が文明的である。これは戦後の学校給食、一般家庭の朝食に現れ、背景には「日本の伝統文化への蔑視」がある。

「いただきます」の礼節が失われた理由 
〔例示〕中国都市部の現象
おいしい中華料理の国で、ハンバーガーの流行見られるように、
―アメリカ文化へのあこがれ―大量生産・大量消費(アメリカ文化のシンボル)
―かつての「礼節の国」の伝統を文化大革命が破壊した。

日本でも、アメリカ型の食生活が浸透するにつれ、「いただきます」を言わないケースが増えているが、食事をするのは動植物の命をいただくことであり、食事の前に「いただきます」を言うのは、マナーを超えて、自然に対する感謝に基づく行為である。

「自然収奪型文明」から「自然循環型文明」へ
〇アメリカの食文化と入植したアングロサクソンが森を破壊したことは同根であり、人間以外の他者の命への畏敬の念に乏しい文明は、自然への敬意にも乏しい。

〇四大古代文明の地はほとんど砂漠化・荒地化した。 農耕と牧畜をセットにした文明それ自体による大規模な環境破壊の結果である。12世紀以後の大開墾時代に森を破壊し、17世紀の段階でスイス、イギリスの森が90%、ドイツの森は70%が破壊された。
〔例示〕ギリシャ=ヒツジやヤギを大量に放牧→草を全部食べつくしてしまう
―森が消える⇒放牧が原因

〇畑作・牧畜文明の延長線に現代文明が存在する。有限の化石燃料を採掘し続け消費し続けて地球環境問題を引き起こした現代文明は「自然収奪型文明」と言える。

〔例示〕ニュージーランド・マオリの人々アングロサクソンが来るまで何を食べていたか
―タンパク源として魚、主にウナギ
―タンパク質を何からとるかが自然を守ることと深くかかわっている
―長い間、森を破壊せずに暮らしていた

〇「文明のシフト」のためのヒント
一万年の長きにわたって森を破壊しない文明を保ち続けた縄文時代は「自然循環型文明」のはるかな原点であり、日本は森との共生の努力を続けてきた。

(例)鎮守の森―森を食いつぶす家畜の数は厳しく抑えられた。家畜のかわりに里山の資源を循環的に利用してきた。
日本は世界でも有数の「森の豊かな国」緑被率(森林が国土に占める割合)は70%で、先進国中では突出した高さ。
ヨーロッパ諸国 20~30%程度、イギリス10%以下、アメリカ33%程度。
日本が森の豊かな国であり続けてこられたのは、「自然と他者の命に対する畏敬の念」が文明の基層部分に存在するからである。

(更新日 : 2020年12月01日)