森林文化学習会 10月

R02年度学習会 ~森林を良く知ろう~    [森林観察学習部会]

2020.10.01.10.15

10月の学習項目は以下の通りでした。
〇10月1日
2章 縄文と聴講文明を結ぶ「声明の法」…………………………………池田・井村e
〇10月15日
3章 命を慈しむ「環太平洋生命文明圏」…………………………………黒田・矢崎
11月の学習予定
〇11月5日 場所:ゆいわーく茅野101,102
4章 何を食べるかが「生命文明」の分かれ道……………………………定成
5章 間近に迫る現代文明の危機(前半)…………………………………中野
〇11月19日 場所:ゆいわーく茅野301,302
5章 間近に迫る現代文明の危機(後半)…………………………………井村j
6章 「生命の法」と「慈愛の心」が地球と人……………………………吉江

第2章 縄文と長江文明を結ぶ「生命の法」  池田昌史 さん(会員)の資料から

縄文人が世界最古の土器を作れた理由
〇著者安田喜憲が縄文時代は未開で野蛮な時代の認識であったが、縄文文化こそ、深く生命を慈しむ文化であったとの縄文時代再評価の契機は、考古学者・芹澤長介の“日本の縄文土器は世界最古である”との主張を知ったことにあった。

芹澤長介(1919~2006)日本の考古学者、旧石器時代研究の第一人者。東北大学教授。
戦前のわが国では、縄文時代以前の日本列島に人類は居住していなかったと考えられていたが、彼はこれを疑問視し、放射性炭素年代測定の結果により、日本列島に相当古くから人間がいた可能性を指摘した。特に1949年に群馬県岩宿遺跡の発掘に携わり、アマチュア考古学者相沢忠洋が関東ローム層から採集した石器を旧石器時代のものと確信し、これまで日本に旧石器時代はないとしてきた考古学会に議論を巻き起こした。

1959年当時は神奈川県横須賀市の夏島貝塚 縄文時代早期(9000年前)の夏島式土器が世界最古の土器とされていたが、現在は青森県外ヶ浜町の大平山元Ⅰ遺跡の縄文時代草創期(16500年前)無文土器が世界最古の土器と認定されている。

〇日本及びモンスーンアジアの地域が、まだ農耕すら始まってないにもかかわらず、世界最古の土器を持てたのはなぜか?→過去の気候変動に起因すると考えられる。

〇特定の条件を有する湖の底に形成される縞模様「年縞」にはその時々の環境変化(過去の気候や森林など周辺環境の変遷)が1年単位で刻みつけられている。
世界各地(ドイツ、グリーンランド、トルコなど)の年縞分析の結果、15000年前に地球の気候が氷期から後氷期に大きく変わったことが判明した。この様な、大きな気候変動期には、気候変動に地域差・時間差があることが分かった。
私たちが住むアジアモンスーン地域は、氷期から後氷期への移行期に、地球温暖化による生態系の遷移が世界に先駆け引き起こされ、温帯の生態系に移行した。新しく出現した温帯広葉樹の森の資源を利用するために土器革命が成し遂げられた。

縄文時代こそ「生命文明」のルーツ
〇西田正規が「定住革命」と称した定住生活により、土器を日常的に使用。その用途は貯蔵・器のみならず、食物の煮炊きの道具として使った。竪穴住居の中で炉を囲み、鍋料理を食べる家族団らんの食事風景が始まる。家族一人一人の命に対する思いやり、すなわち他者の命の大切さに目覚めた。その例証として、死んだ子供の足形をとり子供の形見として親の墓に一緒に埋葬した。縄文人の家族の絆、親子の絆は現代人も驚くほどの深いもので、この足形は、縄文人が命というものを厳粛に見つめ、大切にする心性を持っていたことを象徴するものである。

〇縄文社会は、女性重視の母権制社会であった。縄文時代の遺跡から出土した土偶の多くが、妊娠したと思われる大きな腹を持った女性を象っている。命を宿し、命を育み、産む存在である女性に皆が畏敬の念を持つ社会であった。

〇縄文時代は史上まれにみる平和な時代であった。1万年以上続いたその間、個人ではなく集団同士が殺しあった戦争がなかったと考えられる。それこそ「生命文明の時代」だったと言える。縄文のような社会のありようこそ、真に「文明」と呼ぶにふさわしいのではないか。

〇著者は戦争に明け暮れた畑作牧畜民の人々により作られた西洋の文明を「力と闘争の文明」、稲作漁労民に作られた東洋の文明を「美と慈悲の文明」と位置づけた。生命への畏敬の念を基盤に、生命を慈しむ「美と慈悲の文明」こそが真の文明である。生命を慈しむとは、命を慈しむがゆえに死についても深く見つめることであり、死があるからこそ生も輝き、死は次の世代に命をつなぐものなのだ。縄文以来のアジアの稲作漁労文明は、そのような死生観に立っている。

〇人間に死があるのと同様に、文明にも死が訪れる。過去の歴史を見ても、滅びなかった文明はない。一つの文明の死によって、次の新しい文明にバトンタッチされ歴史は進んできた。爛熟の極みにある現代文明も、遠からず死ぬ!そのことを認識した上で、死にかけた文明の延命でなく、現代文明に代わる新しい文明、生命を慈しむ文明を作ることに注目すべきである。現代文明の「死」までの猶予期間は、どう長く見積もってもあと50年である。

(更新日 : 2020年10月31日)