森林文化学習会 10月

~森林を良く知ろう~    [森林観察学習部会]

2019.10.3 10.17

温暖化に貢献しうるブナ林  成熟林は炭素を必要としていないのか?
森林環境2015 テキストP48~58    井村淳一さん(会員)の資料から

1.森林生態系における炭素循環

NEP:Net Ecosystem Production
[同義]生態系純生産量 正味生態系生産量
一定期間内(通常1年間)における純一次生産から有機栄養生物の呼吸による炭素損 失を引いた値に等しい。
純一次生産(植物の光合成による炭素吸収量=総一次生産から呼吸による炭素放出量 を差し引いたものから植物の枯死、分解による炭素放出量を差し引いたものである。
NPP:Net Primary Production 純一次生産
植物が光合成により大気中の二酸化炭素を固定し、生産する有機物の量のことをい う。一定期間内(通常 1年間)における総一次生産(植物の光合成による炭素吸収    量)から呼吸による炭素放出量を差し引いたものである。
GPP:Gross Primary Production
総一次生産 光合成によって生産される有機物の総生産量

(出典:テキスト森林環境2015)
生態系純生産量(NEP)=総一次生産量(GPP)-生態系呼吸量(ER)
生態系呼吸量(ER)=地上部の呼吸量+土壌呼吸量(SR)
土壌呼吸量(SR)=植物地下部の呼吸量+微生物呼吸量(HR)
微生物呼吸量(HR)=(植物の枯死部+土壌有機物)の呼吸量で従属栄養生物の呼吸量
純一次生産量(NPP)=総一次生産量(GPP)―地上及び地下の植物体の呼吸量

2.時間とともに変化する森林生態系の炭素循環

従来は成熟林や原始林では総一次生産量と生態系呼吸量はほぼ等しくなり、NEP はゼロを示すと言われてきたが、現在では、少なく見積もっても陸域生態系全体のCO2吸収量の1割程度になることが判明してきた。
このことは、地球温暖化の主因がCO2の増加であると言われている中で、この炭素吸収量(年間約1Gt)は考慮されていなかったことになる。この収支をどう整合をとるのか今後の課題である。

3.成熟林のNEPがゼロにならない仕組み

成熟林の更新の仕組みにある。ギャップ・ダイナミックスにより、若い林がギャップに依存して形成され続けていて、実際の成熟林は動的な生態系であり、実生の林、若い林、そして老齢な林が同所的に存在していることが、NEPがゼロにならない要因と言える。

4.カヤノ平ブナ成熟林の炭素吸収能力

カヤノ平ブナ林は冷温帯の主な極相種であるブナが優先する成熟林(ブナの樹齢300~500齢)である。
この成熟林を小プロットに分け、その土壌呼吸量の空間変動を測定するため、各地点の土壌温度、土壌水分、と林冠の開空度をしらべた。土壌呼吸量は小プロットごとに大きく異なっている。P56 図6

5.ブナ成熟林の土壌呼吸の空間不均一性の要因P56 図7

①土壌温度が上がるにつれて土壌呼吸速度もあがる。
②開空度が上がるにつれて土壌呼吸速度は低下する。
③表層の土壌水分が上がるにつれて、土壌呼吸速度は低下する。
④開空度が上がるにつれて表層の土壌水分が増加する。
つまり、ギャップ等で林冠が開けてくるにつれて、土壌水分が高くなり、土壌呼吸速度は低下する等、林分の構造により場所による土壌水分の違いが土壌呼吸量の場所の違いに現れている。この違いがNEPの評価にも影響している。

6.気候変動下での森林生態系の炭素吸収能力

森林の炭素循環が時間的に変化することや、成熟林の炭素循環はまだ未解明なところ が多い。よって温暖化の主因とされるCO2濃度の上昇も、この森林生態系の炭素循環と炭素吸収能力が環境要因に大きく左右されることが判ってきているので、更なる研究が必要である。

11月の学習項目
〇11月7日
第1章 IPCC 第5次報告の意味するところ………………………中野
第3章 自然林と人工林における気候温暖化の影響と対応策……井村e
〇11月21日
第5章 雪国の古民家にみる森と人の関わり………………………池田
第6章 自治体の施策に適応策を組み込むには……………………本村