R01年度 事業計画・報告

学習会 レポート  (R01年度)


月に2回実施している学習会からの情報発信レポートを連載します。


2019.5.9 5.23

~森林を良く知ろう~
 本年度の教材を何にするか、いくつかの候補を参加者で討議した結果、気象のメカニズムを知ることを目的に、前半の教本を決めました。

<使用テキスト>
 「異常気象と地球温暖化―未来に何が待っているか」 鬼頭昭雄著 岩波新書

     
5月の学習項目は以下の通りでした。
○5月9日
教本の検討、進め方の説明、輪講講師決め
○5月23日
第1章 異常気象 井村j、石田
1.異常気象とは何か
2.気温の長期変化
3.最近の異常気象から 記録的な大雨
4.大雨 短期間大雨 特別警報 

フェーン現象のしくみを知るために  石田 豊(会員)の資料から

水蒸気量と湿度
水の三態変化
水という物質は、温度によって姿を変える。
表1
※常温状態に水の三態が存在することは、生命の生存に重要。地球の大きさと、太陽からの距離によって、ちょうど良い環境が保たれている。

飽和水蒸気量
空気の成分は、約78%は窒素、約21%が酸素、アルゴンや二酸化炭素が1%(未満)の大気組成で、そこに水蒸気が、約1~4%程度含まれる。(空気1ℓは1.2g。1m3は1.2kg)
空気中に含むことができる水蒸気量は、限界があり、低温ほど少なく気温が上がると増えるが、限界以上は空気中に気体のまま含むことができなくなり、雲・霧・雨粒・露などの水滴になる。
空気1m3中に含むことができる、温度ごとの最大水蒸気量を「飽和水蒸気量」という。
  表2
湿度
湿度とは、その時の空気中の水蒸気量が、その時の気温の飽和水蒸気量のどれくらいの割合か?(%) ということで、一般的に次の式で求められる。
  表3
気温と湿度の関係
当然、空気中の水蒸気量が増えれば(地面からの蒸発や、湿った空気の流入)、湿度は上がる。
が、それは気温の変化なかった場合である。
例題をやって気づくと思うが、空気中の実際の水蒸気量が変化しなければ、気温が高いほど飽和水蒸気量gが多くなる(公式の分母が大きくなる)ので、湿度は下がる。
雨などによって空気中の水蒸気量が変化しなければ、気温が低い時は湿度が高く、気温が上がると湿度は下がる。というふうに、気温と湿度のグラフは、逆のカーブを描く。
表4
フェーン現象
気温は、標高が低いところほど暖かく、上空は気温が下がる。これはいろいろな説明がされるが、次のように考えると理解しやすい。
(a)標高が低いところは気圧が高く、熱を持っている空気の粒の密度が高いので気温が高くなる。
同じ空気の塊を上空に運ぶと、気圧が下がり、空気の粒の密度がまばらになる。熱の集まりもまばらになるので、気温が下がる。こういう現象を「断熱膨張」という。
その温度変化は、100m上昇すると、1℃下がり、100m下降すると、1℃上がる。
(b)一方、空気の状態が変化しなければ、温度変化の割合は変わらない訳だが、空気中に含まれる水蒸気が、露点を超え、結露し始めると、持っていた熱を放出するので、気温の下がる割合が緩和されます。100m上昇するごとに、0.5℃下がる。

次の例題をやって、フェーン現象のしくみを理解しましょう。
表5



        
6月の学習項目
○6月6日
第2章 地球の気候はどう決まっているのか
1.気象システム 担当 黒田
2.異常気象の発生 担当 矢崎
6月は1回になります。


2019.6.6

第2章 地球の気候はどう決まっているのか    黒田キミさん(会員)の資料から抜粋

【 気候の成り立ち 】
地球の気候は、太陽エネルギーによって大気が循環し各所で水、その他の物質のやりとりが行われる複雑なシステムであり、気候システムと呼ばれている。(テキストp.37図2-1)
特に、地球表面の7割を占める海洋は大気(酸素、二酸化炭素や水蒸気等)との間で、海面を通して熱や水蒸気などを盛んに交換しており、海面の水温や海流の変動は、気候に大きな影響を及ぼす。

【 気候を決める要素 】
気候システムを駆動する力は太陽エネルギーである。
太陽から地球が受け取るエネルギーの変動の原因としては、次の4項が考えられる。
 1. 時間スケールでの太陽自身の変化
 2. 火山の噴火
 3.大気の組成の変化
 4.土地表面の変化

【 地球の温度はどう決まっているか 】
地球全体の温度は、太陽から受け取るエネルギーの収支により決まる。
地球が宇宙空間へどれだけエネルギーを放出するかは、地球の温度によってきまる。入射する太陽放射と「反射+気候システムからの放射」が釣り合うところで地球の温度は決まる。
太陽から地球大気の上端に到達する1平方メートルあたりのエネルギーは、昼夜平均して340ワット。このうち、30%の100ワット分が宇宙空間に反射される。

【 温室効果 】
地上約5㎞の温度はマイナス18℃だが、実際の地上気温はそれより高い。
その理由は、大気中に温室効果ガスが存在するから。
<温室効果の仕組み>
温室効果ガスは、赤外線を吸収しやすいが、可視光線は吸収しにくいという性質を有する。
太陽によって暖められた陸や海などの地表面からは赤外線が放射されるが、その多くが温室効果ガス(水蒸気、二酸化炭素、メタン、一酸化炭素、オゾン、ハロカーボン類など)で吸収される。
すると、大気が温まり、そこから赤外線から放射される→大気からは上下左右の全方向に赤外線が放射されるため、ほぼ半分は地表に向けて放射されることになる。このため太陽から直接受け取るエネルギー(反射されるエネルギーの残り)よりも多くのエネルギーを、地球表面は受け取ることになり、温室効果ガスがない場合よりも地球表面は温度があがる。これが温室効果ガスである。

【 気候システムを冷やす/暖める 】
気候システムを冷やしたり暖めたりしている重要な要素として、雲とエーロゾルがある。
雲:
太陽光を反射して地球を冷やしているだけでなく、地球からの赤外線放射を吸収するため、地球を暖める役割もしている。
 (大気上端に達した太陽光線の30%は、宇宙空間に反射されるが、その3/4が雲やエーロゾルのよる) 雲量の小さな変化が気候システムに重大な影響をもたらす。
エーロゾル:
大気中に浮遊する微小な液体や固体の粒子状の物質。
光を散乱したり吸収したりすることで、地球の熱収支に影響を及ぼす。又、雲粒の「たね」としても作用するので、雲の性質を変化させることを通じて気候に影響を与えている。
 自然起源のエーロゾル:
 砂塵嵐による鉱物粒子の飛散、海面からの飛沫、火山噴火の噴煙、森林火災からの「すす」(黒色炭素)、植物の生命活動からの有機炭素等
 人為起源のエーロゾル:
 化石燃料を燃やすことにより出る硫酸塩や「すす」
エーロゾルは対流圏では1日~2週間で、最後は重力で落ちたり、雨に取り込まれたりして地表に落下するが、降水現象のない成層圏に入ったものは1年以上もとどまる。

参考図書: 気候変動を理学する 多田隆治著、気候文明史 田家康著


     
7月の学習項目
○7月4日
第3章 気象変動の過去と現在
1.気象の温故知新 古気候学 担当 吉江
2.氷河期と間氷河期サイクルの仕組み
担当 池田
○7月18日
3.温暖化が停滞から復活するか 担当 南波
4.異常気象の原因特定 担当 井村e


2019.7.4 7.18

第3章 気候変動の過去と現在    吉江利彦さん(会員)の資料から

1 気候の温故知新 ―― 古気候学
 古気候とは一般に、温気象測器で直接測れないほど昔の気候です。 気象測器による記録は100年程しかない。

○どのように過去の気候を推定するか
代替指標データを使って過去の気候を調べている。
代替指標データとして使われているデータには、樹木の年輪、花粉化石、洞窟内の石筍や氷筍、湖沼堆積物、海底堆積物、氷床下の氷などがある。
多く使われる手法は、同位体を用いた分析です。

○氷床コア
氷床コアの中に含まれている気泡を分析することによって、過去数十万年の寒暖の度合いや、二酸化炭素濃度などの大気組成がわかる。また、火山灰や塵も入っていて火山活動や砂漠が広がっていたかどうかが推定できる。

○時間と空間のスケール
代替指標には、サンプルが採られた地点のみの気候記録を代替しているものもあり、地域的な広がりをもった空間的代表性のあるものもある。 多くの代替記録を集めることで、ある時代の北半球高緯度の気温を現在と比べ統合する試みを続けている。

○時間スケールとメカニズム
数十万年かけて起こる気候変動と、異常気象とはメカニズムが異なります。 統合的に古気候代替指標データが収集され、将来の気候の定量的予測に用いられているのと同様な気候モデル※1による古気候シミュレーションが行われています。それによって過去の気候変動のメカニズムを調べるとともに、データとモデルの比較を通して、将来予測に用いる気候モデル※1の評価や検証も行われています。 ※1:地球上の大気、海洋などの気候を長期的・量的にシミュレーションするもの。

○今は氷河時代のまっただなか
地球上に氷床が存在する時期を「氷河時代」といいます。氷床が大きく発達した時期「氷期」と、限られた地域のみに氷床が見られる時期「間氷期」の交代を繰り返してきました。最後の氷期は2万年前ごろに最盛期を迎え、現在は氷河時代の中の間氷期です。

○大陸移動
氷河時代は古くは24億5千万年前から何度か存在していて、この間、大陸配置が大きく変わるとともに、大気中の二酸化炭素濃度や大陸氷床の大きさも変動してきました。大陸配置は現在でも続いていて気候システムの重要な外部条件でもあります。

○過去の二酸化濃度
古い氷河時代以降でも大気中の二酸化炭素濃度が現在の10倍以上の時代もあり、世界平均気温が現在より数℃以上温暖な時代も珍しくはありません。 最近の6500万年間、気温の高い時代は二酸化炭素濃度の高い時代とほぼ一致していることがわかっています。

○古気候シミュレーション
約5000万年前と約350万年前の時代では収集された古気候代替指標データが統合化され、気候モデルによるシミュレーション結果との比較がなされています。約350万年前の二酸化炭素濃度は400ppmほどで、代替指標から海面水温は今より1.7℃高かったと推定されています。

○海面水位
海面水位の推定は世界各地の地質調査をもとにされていて、350万年前には約20m分、海面が高かったという報告があります。海面水位を再現するには氷床の消長の地質記録から海への正味の水の移動を推定するだけでは不十分でアイソスタシー※2を通じた地盤の変化を計算する必要がある。 ※2:地殻が,密度のより大きいマントルの上に浮かんでいる状態にある,という現象のこと。


     
8月の学習項目
○8月1日
第4章 21世紀の地球はどうなるか
1.未来の気候を予測する 担当 定成
2.21世紀の温暖化の進行
担当 井村j
○8月22日
第5章 日本の気候はどうなるか
1.地域気候モデル 担当 石田
2.異常気象の変化 担当 井村e


2019.8.1 8.22

第4章 2.21世紀の地球はどうなるか    井村淳一さん(会員)の資料から

○世界の気温上昇
IPCCのAR5(第5次評価報告書)では、21世紀末(2081~2100年)の世界平均気温は1986年~2005年の平均気温に対し以下の上昇量になると予側しています。
表 表
※RCP(Representative Concentration Pathway:代表的濃度経路)とは?
代表的な温室効果ガスであるCO2は、いったん大気中に排出されると、森林や海洋など生態系に吸収されない限り、大気中に残り続ける。平均気温の上昇は大気中の温室効果ガスの濃度に比例する。大気中に温室効果ガスが累積すればするほど、気温が上昇するということになる。
RCPの2.6や8.5などの数字は、地球温暖化を引き起こす効果(放射強制力と呼ばれる)を表す(単位W/㎡)。値が高いほど、温室効果ガスの濃度が高く、温暖化を引き起こす効果が高いことを示す。
出典:WWFジャパンHP「地球温暖化についてのIPCCの予想シナリオ」

○昇温の大きい範囲
北極域は世界平均より速く温暖化し、陸上における平均的な温暖化は海上よりも大きくなるだろう(非常に高い確信度)
北極域:現在太陽光を良く反射する雪氷が、気温上昇とともに面積を縮小し太陽光の吸収が加速される。
陸域の気温上昇は海上よりも1.4~1.7倍の範囲で上昇するだろう。
海上では温度が上がると蒸発が増え蒸発の気化熱が奪われるので、気温上昇は抑制されるが、陸域は土壌水分に限りがあり蒸発が抑制される。
極端な高温現象が増え、極端な低温現象が減るだろう。熱波の頻度が増加し、より長く続く可能性が高い。

○熱帯域が広がる。
気温が上昇すると大気の循環が以下のように変化する。
ハドレー循環の範囲が拡大し、ウォーカー循環は弱まり 熱帯域が広がる。

○降水量の差が拡大する。
長期的には世界平均気温の上昇とともに世界平均降水量が増加する。
(気温が高くなると飽和水蒸気量が高くなる。==>水蒸気量も増えるので、降水量も増加する。)
高緯度陸域では気温が上がり水蒸気量が増加するため降水量は増加する。
中緯度および亜熱帯の乾燥、半乾燥域では降水量は減少し、湿潤な中緯度域では降水量が増える。降水量の空間的変動が大きくなる。
短期的には気温の上昇に伴い、個々の低気圧の強度が増し、弱い低気圧の数が減る。
中緯度陸域の大部分と湿潤な熱帯域では、極端な降水現象が強度と頻度も増える。
これも大気中の水蒸気量が増えることが原因

○縮小する雪氷圏
積雪面積は平均気温の上昇とともに減少する。
21世紀の間、北極域の海氷面積が縮小し、厚さは薄くなり続けるだろう。

○海洋酸性化
大気中の二酸化炭素濃度の上昇に伴い、海水中に二酸化炭素が溶け込むと海水のpHが下がりアルカリ性が弱まる。これを海水の酸性化と言う。
海水の酸性化が進むと、水素イオン濃度が増加し、水素イオン濃度が増加すると炭酸カルシウムの殻の形成が困難になる。

○長期的な海面上昇
低位安定化シナリオでは:工業化以前に比し、2300年までに1mの水位上昇
高位参照シナリオでは1~3.5mの水位上昇

○累積総排出量に比例して世界平均気温が上昇する
人類が大気中に排出した二酸化炭素の総量によって、21世紀後半以降の世界平均の地表面の温暖化の大部分が決定される。<==AR5の結論
66%を超える確率で2℃未満に抑えるには、温室効果ガスの排出量を1兆トン以下に抑える必要がある。二酸化炭素排出量では7900億トン。(すでに2011年までに5150億トン排出しているので、2012年度の排出量が97億トンなので単純計算して後30年でこの限界を超える。


     
9月の学習項目
○9月5日
第6章 気候のティッピングポイント
1.気候が不安定になるとき 担当 本村
2.ティッピングポイントはくるのか
担当 下田
○9月19日
第7章 気候変動の影響
1.すでに生じている影響、予想される影響 担当 中野
2.緩和策と適応策 担当 中野

私たちは、このような活動を通じて人と森林との新たな関係を作り出し、豊かな森林を次世代にバトンタッチしたいと願っています。